かきものに耳を傾けて。

モデル兼デザイナー、酒井景都が心惹かれる画集とは。

学生時代、モデルの仕事をしながらお母さんの会社で洋服ブランドを立ち上げ、洋服作りを始めたという、デザイナー兼モデルの酒井景都さん。

イギリスのアンティークショップを経営していたお母さんが、洋服を作ったり、デザイン画を描いている姿を子どもの頃から見ていたことがきっかけだそう。縫製工場のあり方、パタンナーさんへの依頼の仕方などを一つひとつ教えてもらい、大学卒業後は自分自身で洋服作りを始めた。

最初は不安で不安で、胃腸炎になったりして。でも、夜遊びの中で知り合ったファッション関係の人とか、ファッション好きな専門学生とかが手伝ってくれたんです。できないことは人に手伝ってもらって、みんなで楽しくやっていくうちに、母親とは関係ないチームのようなものができました

 

楽しそうに語る景都さん。

いまではもう2歳になるお子さんがいて、ベビー&キッズブランド「ティタール(tytäär)」の展開も始めている。

アンティーク屋にあるレースのものとか、刺繍のものとか、昔の手仕事のものを見て育ってきたから、そういうものに惹かれます。可愛い世界、女の子っぽい服の世界が好きなんです。大人になると、「わたしこれ着れないわ」っていうのが出てくるけど、子ども服だったらおもいっきり可愛くても、みんな着れるので。それが子どもの特権

 

環境を素直に好きになって、それを自分に取り込めていることがうらやましい。わたしは反抗期に、母が買ってくれる服と真逆の服を着ようとしていた。

そう伝えると、景都さんは意外なことを教えてくれた。

そういう時期もありました。プチ反抗期みたいなのが来て、スポーツウエアみたいなのが着たくなって。突然まわりに「景都ちゃん、なんか服変わったね」と言われたり(笑)

キャンディストリッパーとか、ヒステリックグラマーも好きになりました。13、14歳から「Olive」のモデルを始めたんですけど、それをやりながら、「Zipper」を読んでいたんですよ。原宿に行ったり、ちょっと派手なものがいい、みたいな

 

おもしろい! ガーリーの老舗雑誌「Olive」ガールだった景都さんが、ストリートファッションの雑誌を読んでいたなんて。おかしくて、笑いがこらえきれなかった。

その後、高校の時に古着にハマり、また可愛いものに惹かれていった景都さん。回り道をしている人の話って、なぜだろう、信用度が高まる。

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そんな景都さんの大切なかきものは、『智恵子 紙の美術館』という画集だった。高村光太郎の妻、智恵子が統合失調症を患い、病室にいた時に作っていた切り絵を集めた画集だ。

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この銀紙とか、千疋屋の包装紙とか、多分、お見舞いにきてくださる方があげたのかな、と思える紙も使っていたり。基本的には、千代紙とかなんですけど、すごい綺麗だなと思って

 

春らしい色合い。派手ではないけど、優しいのに鮮やかだ。

この繊細な感じが好きで。あと、統合失調症の方って、すごく綺麗な作品を作られるなと。そこにも興味があります。草間彌生さんもそうですよね。どうしてあの絵を描くようになったんだろう、とか

 

アウトサイダーアートをファッションに取り入れることは、海外でも注目されている。(その様子は、去年の渋谷のラジオに来ていただいた、映画監督の笠谷圭見さんがお話くださっています。)

智恵子さんの作品の、ピンクの色合いの使い方やガーリーな世界は、景都さんの世界につながる気がする。

すごく女性らしい方だったのかなと。高村光太郎さんの本を読むと、とにかくとにかく優しかった、って。彼自身が病気になった時もすごい支えてもらったとか。もう異常な優しさだったらしく、それが作品に出ているのかなと思います

 

羊羹、スイカ、バナナ、トマトなど、この感じでアクセサリーがあったらすぐ買いたいって思う。和風でもあるから、着物、帯とかにもよさそうだ。

異常なくらいの優しさ。ちょっとぎこちない、子どものような優しさ。繊細で、どこかに少しだけ、影もありつつ、夢の世界にいるようなデザイン。それは、ものすごく、所有欲をかきたてる。

誰しも、心の病みは多少なりともあるもの。
景都さんにだってきっとあるはず。

秋には、初めて注文した景都さんの女性向けブランド「And Curtain Call」のワンピースが届く。

これまで、景都さんのデザインする服は見てばかりだった。初めて所有して、着てみてこそ気付ける繊細さや安心感、そしてわたしのいびつさへの包容力……そんなことをいまから妄想している。

酒井景都 Kate Sakai
イギリスでアンティークショップを営む両親の元に生まれる。中学生の時に雑誌「Olive」でモデルデビューして以来、ファッション誌などでモデルとして活躍。「Made in COLKINIKHA(コルキニカ)」をはじめ、さまざまなブランドでデザイナーやディレクターを経験。現在はアパレルブランド「And Curtain Call(アンドカーテンコール)」とbaby & kidsブランド「tytaar (ティタール)」のデザイナー兼ディレクターを務める。著書に、『Cahier romantique』(MARBLE BOOKS刊)、『Girl in Mode Kate's BOOK』(宝島社刊)ほか。

アンドカーテンコール
www.e-look.jp/shop/andcurtaincall
ティタール
https://tytaar.jp

華恵

エッセイスト/ラジオパーソナリティ

アメリカで生まれ、6歳より日本に住む。10歳よりファッション誌でモデル活動を始め、小学6年生の時にエッセイ『小学生日記』を出版。現在はテレビやラジオ、雑誌などさまざまなジャンルで活躍中。

Instagram:@hanaechap

Twitter:@hanae0428

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