グレタはなぜ戦いを続けられるのか? 少女が世界を動かすまで。

Culture 2021.10.19

2018年に始まった「グローバル気候ストライキ」の仕掛け人であるストックホルム在住の環境活動家は、その後、国連で講演を行った。映画「グレタ ひとりぼっちの挑戦」(1)は熱狂的な環境保護活動家となったスウェーデンの高校生の旅路を描いた物語だ。

「皆さんは、自分の子どもたちを何よりも愛していると言いながら、その目の前で、子どもたちの未来を奪っています」

彼女の口調は穏やかだが、その言葉は鋭い。2018年12月にポーランドのカトヴィツェで開催された国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)で、当時16歳だったグレタ・トゥンベリは、世界中の学生たちにインターナショナル・ストライキを呼びかけた。それ以来、この少女は、主要国に地球温暖化防止のための具体的な行動を促すことに熱心に取り組んできた。特に、多くのNGOや(気候変動に)最も脆弱な国にとって失望的なCOP24の後、世界中の何千人もの若者にとって必要かつ刺激的な呼びかけとなった。

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2019年、フランスの都市カーンでリベルテ賞を受賞した18歳のグレタは、7月23日(火)に「Accélérons la transition écologique et solidaire(環境保護と結束力の加速)」団体のメンバー162人から国民議会に招待され、議論を交わした。「誰もやりたがらないし、あえてやらないから、簡単ではないことを伝えなければならない悪者になってしまった」とグレタは具体的に述べた。12月11日(水)に米誌「タイム」の「パーソンズ・オブ・ザ・イヤー2019」に選出された、気候変動対策のアイコンである彼女のキャリアを振り返ろう。

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“2078年、私は75歳の誕生日を迎える”

三つ編みと淡い青い目をしたスウェーデン人のグレタは、若々しい顔立ちとは対照的に成熟した言葉を発した。「一部の人が贅沢に暮らすために、生物圏が犠牲になっている」。12月14日に開催されたCOP24では、トップリーダーたちを前に「多くの人々の苦しみが、少数の人々の贅沢の代償となっている」と述べた。

そして、「2078年、私は75歳の誕生日を迎え、もし子どもがいれば、その日を一緒に祝うかもしれない」とうつむいて話し続けた。「私の子どもたちは、『アクションを起こせるときになぜ何もしてくれなかったの』と私に尋ねるかもしれません」とグレタは数百人の代表者に向けて述べた。最後に、「私は、皆さんが好むと好まざるとに関わらず、変化が起こっていることをお伝えするためにここに来ました。真の力は人々に宿っています」と、頭を高く上げて締めくくった。

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学校のストライキ

グレタ・トゥンベリは、このスピーチで注目されて以来、地球温暖化防止のための新たなアイコンになった。しかし、彼女の母国スウェーデンでは目新しいことではない。9月9日に行われたスウェーデン議会選挙の前に、彼女はストライキを決行し、3週間にわたって毎日、学校の授業時間中にストックホルム議会の階段に座り込んだ。彼女はガーディアン紙に自分の行動を説明した。

「学生として、早急な変化を求めるためにロビー活動を行う方法のひとつは、学校でストライキを行うことです。今後、スウェーデンがパリ協定を尊重するまで、私はスウェーデン議会の外に座ります」。学校に復帰した後も、金曜日には、施設の前に座って、「あなたたち大人が私の将来を背負っているから、私はこうしているのよ」と書いたビラを配っていた。これは、気候変動に対して根本的な対応を政府に求める彼女なりの方法であると、イギリスの日刊紙の別の記事は報じている。

スウェーデンはエコロジーの観点から世界のお手本とされることが多いが、グレタ・トゥンベリはそれには全く同意していない。「スウェーデンはロールモデルではありません。スウェーデンの人口は、毎年、一人当たり11トンのCO2を排出しています」とWebサービスMedium(ミディアム)に書いている。さらに次のように続けた。「WWFによると、スウェーデンは世界で8番目に汚染が進んでいる国です」。

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アスペルガー症候群

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グレタ・トゥンベリとモハメド・ナシード(現モルディブ大統領)。(ポーランド、2018年12月13日) photo: Getty images

グレタ・トゥンベリは、8歳のときに学校で気候変動について初めて耳にした。当時の彼女は、「私たちの存在を脅かすような重大なことが起こるはずがない」と信じられなかったという。「そうでなければ、他の話をしている場合ではないはずだから。しかし、私たちのリーダーたちはそのことについて語ることはありませんでした」とMediumに掲載された記事で語っている。

そして、リサーチを始めようと決意し、6年間続けた。ガーディアン紙によると、グレタ・トゥンベリは姉と同じくアスペルガー症候群(編集部注:知的障害や言語の遅れを伴わない自閉症の一種)で、ひとつのテーマに何時間も集中することが苦にならないと、ニューヨーカー誌のコラムで説明している。彼女はこれを「ハンディキャップ」ではなく、エコロジーに注目できた「ギフト」だと考えている。

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12歳の時、彼女は肉を食べず、「不要なもの」を買わなくなった。また、父である49歳の俳優スヴァンテ・トゥンベリ、母である世界的に活躍するオペラ歌手マレーナ・アーンマンを改心させた。2016年、マレーナ・アーンマンは、旅行の際に飛行機に乗るのをやめた。このアイデアは、1年前にグレタが始めたもので、アメリカの雑誌に詳しく紹介されている。同時に、両親を説得してソーラーパネルを設置し、自宅に菜園を作った。そして移動には、車ではなく自転車(もちろん電動)を提唱している。グレタ・トゥンベリは手本となるべき存在なのだ。

(1) 2021年9月29日に映画館で上映されるネイサン・グロスマン監督のドキュメンタリー映画「グレタ ひとりぼっちの挑戦」。

※本記事は、2018年12月12日に掲載されたものを再編集してお届けしています。

text : Mooréa Lahalle (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi

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