じんちゃん食堂。フランス人常連客で賑わう味自慢の居酒屋。

Paris 2022.01.21

新型コロナウイルスのせいで、日本に行きたくても行かれない、と嘆くパリっ子たちが多い。帰りたくても帰れないという日本人もいる。そんな彼らに教えてあげたくなるのが「Jinchan Shokudo(じんちゃん食堂)」だ。オープン当時は定食スタイルの店だったけれど、去年、昭和が香る懐かしいポスターや看板で壁を飾ってレトロに一新(?)。店内ではアラカルト・メニューで好きなあれこれをおいしく食べられる。

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本当にここはパリ?と驚かされるじんちゃん食堂。店内で食事をするのはフランス人客だ。

日本の居酒屋をイメージしたこの店を開いたのは、ミヨ&アルバン(日本名明男)・カカス夫妻。彼らの願いは、気軽に食べにきてほしい! お腹いっぱいで帰ってほしい!だ。それゆえに、料理はおいしいだけでなく、価格もそのように設定されている。常連が多いというのも、もっともだ。そしてこの常連さんたちはお店への愛が強いゆえ、いつもと味が違うじゃないか!となればオーナーにそれを訴えることも厭わないという。たとえば、じんちゃん食堂では新潟産コシヒカリをご飯に使っている(パリでこうした価格の和食店でコシヒカリが食べられるなんて! しかもリンナイのガス炊飯器炊きとメニューに明記されている!!)。お米は日本からの取り寄せなのだが、一度、届かない時にほかのお米を使ったところ……常連さんはありがたい味の見張り番のようだ。

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居酒屋気分を満喫できるメニュー。食器はちょっとポップな沖縄窯のやちむん(焼き物)を使用している。

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シェフは日本人だが、キッチンで働く人々は国際色豊か。ここで働きたい!と志願してきた日本好きの集団だ。

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お米に限らず、料理に使う素材の調達、ソーシングについてカカス夫妻は追求し続けている。人気を誇るチキンカツ丼、鳥の唐揚げ。理想を求めてたどり着いたブルターニュの業者から、新鮮な鶏肉を仕入れているそうだ。チキンカツは衣がカリッとしていて中が柔らかくジューシー。ファンが増えるのも当然のおいしさである。どんぶりメニューは大きな胃袋のフランス人たちのお気に入りだという。豆腐ハンバーグ丼、唐揚げ丼、サーモン丼……鉄火丼もあるけれど、地中海の本マグロが次に手に入る3月までは刺身と同様にメニューから消えている。ミニ鶏そぼろ丼も魅力。ちなみに、“どんぶり”ということば。“べんとう”なみにフランス語として定着してゆくのだろうか。ポケボール好きが増えているパリだ。これも時間の問題だろう。

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左:人気者、ブルターニュ産の鶏のからあげ(9ユーロ)。 右:海鮮丼(19ユーロ)。ただしマグロや鉄火丼は春までお預け。

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左:ミニそぼろ丼(6ユーロ)。単品でオーダーもできる味玉(1.5ユーロ)をどんぶりものに添えることもできる。 右:新作の“雪ん子”(7ユーロ)。大根、ゆず、シソ、シイタケの甘煮が姫寿司サイズの丸いご飯の上に乗った野菜寿司は、口の中で素晴らしいハーモニーを奏でる。1月21日からはおでんもメニューに。photos:Mariko Omura

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じんちゃん食堂は可能な限り自家製で、という姿勢である。おつまみのレンコンチップスもデザートの抹茶パンナコッタに使われる十勝の小豆を使ったあんも……地下からふわーんと甘い匂いが漂ってくるのも、パティスリーもホームメイドゆえ。声高に叫ぶことなく、“こだわり”を静かに実践するオーナー夫妻の姿勢は味に反映され、じんちゃん食堂は遠くからでも通いたくなるお店だ。たとえば昼ならどんぶりもの、夜はあれこれつまんでお酒も楽しんで、と。日本酒の品揃えにも力を入れていて、1月中旬には静岡県生まれの日本酒のプロモーションを展開したり、2月にはボジョレー・ヌーヴォーなみに日本酒ヌーヴォーを提案する。

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左:デザートのぷるぷる揺れる抹茶パンナコッタ(6ユーロ)。ほかには抹茶シフォンケーキ、チーズケーキ黒ゴマもホームメイドで。 右:レンコンチップス、枝豆、明太きゅうりなどをおつまみに日本酒を味わう。

さて店の奥、ひらがな「ゆ」の文字が見える。まさか銭湯? イエスでありノーでもある。ここはトイレ。だけど扉の裏には、プラスチック桶が重ねて置かれ、壁に富士山が描かれた銭湯気分漂う空間が待っているのだ。この店でおいしい時間を過ごすだけでなく、日本の庶民の暮らしに触れて日本に旅立つフランス人たちは、到着前から日本通!

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左:懐かしのポスターや看板。なおドリンクメニューにはカルピスソーダ、ラムネなども。 右:トイレ内、鏡に映り込む富士山がいかにも銭湯! photo:(右)Mariko Omura

Jinchan Shokudo
154, rue du Faubourg Saint-Antoine
75012 Paris
営)12:00~14:30, 19:00~22:30
無休
www.jinchan.fr

editing: Mariko Omura

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