"アジア全域版アカデミー賞"は、『ドライブ・マイ・カー』が3冠!

Culture 2023.03.22

第16回アジア・フィルム・アワード(以下、AFA)の授賞式が、3月12日(日)に香港の西九龍に新たにオープンした香港故宮文化博物館で開催された。

アジア・フィルム・アワード(以下、AFA)は、2007年に設立されたアジア全域の映画作品を対象とした“アジア版アカデミー賞”。14年からは香港国際映画祭、東京国際映画祭、釜山国際映画祭が共同創設したアジア・フィルム・アワード・アカデミー(AFAA)が主催している。 従来は香港で開催されてきたAFAだが、コロナ禍においてはオンライン、および韓国の釜山で開催され、香港での開催は4年ぶり。香港では3月1日よりマスク着用の義務が解除されたこともあり、アワード会場前のレッドカーペットにも大勢のファンが詰めかけ、華やかさを取り戻した。

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今年は16の部門に、アジア22の国と地域から30作品、81のノミニーが選出された。世界的に注目されている韓国映画のみならず、アジア映画の勢いを感じさせる秀作が揃ったが、中国を代表する巨匠チャン・イーモウが審査員長として率いた審査員団が選んだ最優秀作品賞は、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』に。

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授賞式でスピーチする濱口監督。©Asian Film Awards Academy

8部門でノミネートされていた本作は、編集賞、音楽賞と3部門での受賞となった。受賞スピーチで濱口監督は出演俳優の名前を挙げ、「皆さんが本当に信じられるような感情というものをスクリーンの中で、撮影現場で見せてくれたから、いまこうしていられると思っています。『俳優が本当に何かを感じているから、観客も何かを感じることができるんだ』というシンプルな原則を私自身は信じています。そういうことがこれからも起こせるように、もちろんとてもいい仕事ができたと思ってはいますが、できなかったことにもちゃんとフォーカスをして、またここにいる皆さんと一緒にお仕事ができたらと思っています」と感謝と喜びを伝えた。

2021年のカンヌ国際映画祭でワールドプレミアされ脚本賞を受賞、昨年の米国アカデミー賞では国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』。アワードシーズンを締めくくる有終の美をAFAで飾った。

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最多10部門でノミネートされていた韓国のパク・チャヌク監督の『別れる決心』も、主演女優賞(タン・ウェイ)、脚本賞、美術賞の3部門での受賞となった。パク・チャヌク監督は当初、授賞式に参加する予定だったが、タイで撮影しているA24✕HBOドラマ『The Sympathizer』のスケジュールの関係で欠席。主人公の刑事役を演じたパク・ヘイルが、やはり欠席したタン・ウエイに代わってステージでトロフィを受け取った。

主演男優賞は、フィリップ・ユン監督の香港映画『Where the Wind Blows』のトニー・レオン。1950〜60年代の香港を舞台に、警官の汚職を取り締まる制度を確立したふたりの男を描く本作は、スター俳優トニー・レオンとアーロン・クォックが初共演していることでも話題だ。

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主演男優賞に輝いたトニー・レオンと妻のカリーナ・ラウ。©Asian Film Awards Academy

プレゼンターが妻のカリーナ・ラウで、受賞会見にもふたりで登場! 香港映画界のオシドリ夫婦のツーショットに眼福。またトニー・レオンは、これまでのキャリアと功績に対して、アジア映画貢献賞(Asian Film Contribution Award)も同時受賞している。

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監督賞は、韓国で撮影した『ベイビー・ブローカー』の是枝裕和監督が受賞。本作もワールドプレミアされた2022年のカンヌ国際映画祭でソン・ガンホに主演男優賞をもたらすなど国際映画祭で高評価を得ている作品だ。

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監督賞を受賞した是枝裕和。©Asian Film Awards Academy

是枝監督は、「韓国の素晴らしいスタッフ、キャストと一緒にこの映画を作ることができて、本当に幸せでした。多分これからもこういう国際共同制作のような、文化とか言語を超えた映画作りを続けて行けという激励だと思いますので、頑張っていきたいと思います」とコメント。

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助演男優賞を受賞した宮沢氷魚。©Asian Film Awards Academy

助演男優賞は『エゴイスト』の宮沢氷魚が受賞。宮沢は、2009年に出版された故・高山真の自伝的小説の映画化である本作で、鈴木亮平が演じるファッション誌の編集者と恋に落ちるパーソナルトレーナーを演じた。受賞のステージでは「この映画は、新しい人生の形、人の捉え方、接し方など、様々な扉を開いてくれると信じています。誰もが幸せに、快適に暮らせる日。この映画は、まだ世界中を旅し始めたばかりです」と語ったが、本作は日本でも絶賛公開中、韓国や香港などアジアでは今後公開が予定されている。

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また、キャリアを讃えるExcellence in Asian Cinema Awardを受賞が予め発表されていた俳優・阿部寛は、さらに香港故宮文化博物館開催を記念して創設されたAFA X STI レッドカーペットベストドレッサー賞の初受賞者となった。

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ダブル受賞となった阿部寛。©Asian Film Awards Academy

また、香港アクション映画の黄金期の立役者のひとりである俳優、武術指導、監督、プロデューサーのサモ・ハン・キンポーが生涯功労賞(ライフ・タイム・アチーブメント)を受賞した。

授賞式の前日には、ノミネート作の上映も行った。『ドライブ・マイ・カー』や『ベイビー・ブローカー』の上映には10代、20代の若者たちが多く詰めかけ、終映後に開催された監督とのQ&Aも熱気が溢れていた。華やかな授賞式だけでなく、映画の作り手と観客とのコミュニケーションの機会は貴重で、他のアワードでももっと取り入れられてもいいのではないだろうか。

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第16回 アジア・フィルム・アワード 受賞結果

最優秀作品賞
『ドライブ・マイ・カー』日本

最優秀監督賞
是枝裕和 『ベイビー・ブローカー』韓国

最優秀主演男優賞
トニー・レオン 『Where the Wind Blows』香港

最優秀主演女優賞
タン・ウェイ 『別れる決心』韓国

最優秀助演男優賞
宮沢氷魚 『エゴイスト』日本

最優秀助演女優賞
キム・ソジン 『非常宣言』韓国
最優秀新人俳優賞
MAK Pui Tung 『The Sparring Partner』香港

最優秀新人監督賞
ジグメ・ティンレー 『一人と四人』中国

最優秀脚本賞
チョン・ソギョン、パク・チャヌク『別れる決心』韓国

最優秀編集賞
山崎梓 『ドライブ・マイ・カー』日本

最優秀撮影賞
リュー・ソンイエ 『一人と四人』中国

最優秀音楽賞
石橋英子 『ドライブ・マイ・カー』日本

最優秀衣装デザイン賞
Karen YIP、ドーラ・ン 『アニタ』香港

最優秀美術賞
リュ・ソンヒ『別れる決心』韓国

最優秀視覚効果賞
Chas CHAU, LEUNG Wai Kit, KWOK Tai, LAW May『未来戦記』香港

最優秀音響賞
トゥ・ドゥーチー、Wu Shu-Yao『アニタ』香港

■特別賞
Excellence in Asian Cinema Award
阿部寛 日本
特別功労賞(Lifetime Achievement Award)
サモ・ハン・キンポー 香港
アジア映画貢献賞(Asian Film Contribution Award)
トニー・レオン 香港
AFA Next Generation Award
チ・チャンウク 韓国

アジア・フィルム・アワード・アカデミー
www.afa-academy.com/ja

text: Atsuko Tatsuta

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