メティエダールが花開く、パリの商業空間 メティエダールがパリに集まった。大発見の4日間!

Paris 2022.07.01

メティエダール&クリエイションのインターナショナル・ビエンナーレである「Révélations(レヴェラション)」の第5回目が、6月9日から12日までグラン・パレ・エフェメールにて開催された。これは「Ateliers d’art de France(アトリエ・ダール・ドゥ・フランス)」が2013年に始めたビエンナーレで、第5回目は2021年の予定が1年遅れて今年となったのだ。世界の約30カ国から、アルチザン、学校、マニュファクチャー、ギャラリー、デザイナーなど300以上の出品者が参加。多様な素材、革新的な技術、未知のサヴォワールフェール、意外性に満ちた創造が大集合し、来場したデザイナー、建築家、コレクター、一般客たちを出迎えた。展示スタンドの数だけ驚きがあるこのビエンナーレは、来場者が出品者たちと直に対話を交わせる貴重な場ともなっている。

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グラン・パレ・エフェメールにて開催された第5回目「レヴェラション」。 photo:Alex Gallosi

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中央通路に設置された「Le Banquet(饗宴)」と命名された卓上に10カ国からの大胆なクリエイションが集められた。photos:Mariko Omura

第5回目は会場の中央、「Le Banquet(饗宴)」と命名された巨大な卓上でキプロス、韓国、カタロニアなど10カ国・地方からの大胆なクリエイションを集めて展示。これは来場者たちがメティエダールに向ける新たな視線を期待しての試みとして実現された。またノルウェー、韓国、チリ、ルクセンブルグに次ぐゲストはアフリカ大陸。セネガルやカメルーンなどに加えて、今回新たにナイジェリアとザンビア共和国が初参加して合計15カ国からの織物、家具、陶器、ビーズ刺繍……バイタリティあふれるクリエイションが「アフリカの特例」と題されて、エントランスのコーナーに並べられ、来場者を魅了していた。

主催者のアトリエ・ダール・ドゥ・フランスは1960年に35歳以下を対象にPJCMA(メティエ・ダールの若いクリエーション賞)を設けているように、レヴェラションでもそのタイトルにふさわしく新発見の若い才能にスポットを当てることを忘れていない。今回の開催では、2020年の受賞者2名と2021年の年の受賞者2名の作品をひとつのスタンドにまとめて紹介。紙、羽、陶といったクラシックな素材を扱う3名と、アリや軟体動物などの生き物を素材にする1名である。フランスだけでなく海外からもやってきた大勢に、未来に向けての彼らのクリエイションが披露される良い機会となったことだろう。

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アフリカ大陸のクリエイションを1列に並べて展示。左端のセラミックは今回のポスターのビジュアルにもなった、南アのZizipho Poswaによるセラミックだ。

広い会場に連なる出品者たちのスタンドは吹きガラス、テキスタイル、陶器、メタル彫刻、籐細工など、バリエーション豊富。その中にあって意外ゆえに新鮮に感じられたのがマクラメだ。Laurentine Pélihlou(ローレンティヌ・ペリルー)のスタンドで目をひいたのは、このレヴェラションで展示するために準備したという250×180cmのマクラメによる巨大な植物標本的なパネル。アルチザン・デザイナーの彼女は、2009年から結び編みという手作業の制作を続けている。南米を旅した際に、チリの職人から技術を学んだそうだ。クチュールメゾンのためにも仕事をしているが、マクラメといっても彼女の仕事はモードや手芸の世界にとどまらず。彼女は最近、パリのウルク運河に面した公共の建物のために25メートルの柵をリサイクルのロッククライミングのコードを結んで作り上げている。彼女のマクラメのクリエイションを内装に取り入れたアクセサリーのブティックが、秋にオープンするという。気になるブティック名は、マル秘!ということだった。

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左: マクラメの植物とローレンティヌ・ペリルー。(@laurentine_perilhou) 右: スタンドで彼女はマクラメの可能性をiPadで紹介。photos:Mariko Omura

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Art et Floritude(アール・エ・フロリチュード)

レヴェラションでは先に紹介したタイユヴァンの改装に関わったアトリエ・リゾン・ドゥ・コーヌ、ソレーヌ・エロイだけでなく、メタルのランプシェードを制作した「Art et Floritude(アール・エ・フロリチュード)」のスタンドも。フランスの装飾芸術の伝統でもあり、また時代の気分にぴったりの植物をテーマにした照明を展示していた。プランタン・デパートのモード館でアヴァンギャルドなブランドを集めた売り場である「L'Endroit(アンドロワ)」はアート作品を内装に取り入れているのが特徴だが、そのひとつとしてメタルの葉が輝く大樹もこのアトリエによる作品だ。今回のレヴェラションのスタンドでは、LED電球を秘めた幻想的な銀杏の大樹を展示した。

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左:レヴェラションのスタンドの銀杏の大樹。葉の数、1400枚! 中:Maison Numéro 20が室内建築を担当したパリ8区のHôtel Elysiaのためには、メタルの竹の葉のシャンデリアを。 右:プランタンデパート内にも。photo:Romain Ricard

銀杏の後方で目を引きつけるのは、壁に飾られたアトリエが誇るもうひとつのメティエダールであるビスキュイのサヴォワールフェールを生かした彫刻的なランプ。“花の雲”と呼ばれ、合計1100輪が重なり合った立体的フォルムで、確かに雲のよう。紫陽花、バラ、百合、クチナシ、アイリス、キンポウゲ……花の種類は15種とか。中に込められた電球の光がビスキュイの繊細な花々を透かし、ふんわり優しく空間に浮かんでいた。全てが手作りされる磁器の花は、18世紀のフランスの装飾芸術を彩ったサヴォワールフェールだ。

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スタンドに展示されていた1100輪の花が作り上げる彫刻のようなランプ。

アール・エ・フロリチュードのアトリエはロワール地方にある。かつてロワール渓谷に次々と建築されたシャトーは室内装飾のための家具やオブジェを必要とし、そのために周辺にはフランスの伝統技術を駆使するアトリエが多く生まれたそうだ。このアール・エ・フロリチュードのアトリエで、「花の雲」は400時間をかけて製作された。大変高価な品ということで、商業空間が気軽にオーダーできるものではないそうだが、たとえばカタール・ドーハの高級ホテルの新婚用スイートルーム、ビアリッツの老舗ホテルのオテル・デュ・パレなどのためにビスキュイの花の18世紀スタイルのシャンデリアをクリエイトしたそうだ。また、最近、この「花の雲」タイプのランプがパリ市内のあるパラス・ホテルのスパに設置されたというから、いつか出合えるかも……。

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ロワール地方ノアール・エ・フロリチュードのアトリエで、ビスキュイの花はひとつひとつ手造りされる。

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陶、石、メタルなどを素材にユニークな照明を作るアール・エ・フロリチュード。www.artetfloritude.fr @artetfloritude

editing: Mariko Omura

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