展覧会で知るアライアとレイラ・マンシャリの素敵な友情物語!

Paris 2022.07.04

フォンダシオン・アズディン・アライアで『アライア以前のアライア』展が開催中だ。2017年に亡くなった偉大なクチュリエの“アライア”だが、この展覧会は1940年代から80年に“ブレーク”までのアズディン・アライアとフルネームで呼ばれていた時期にフォーカスを置いている。彼にもこんな時代があったのか、という発見に満ちた展示は興味いっぱいだ。2フロアを使っての展示で、彼がショーを行っていたガラス屋根の下のスペースがメイン会場となっている。これまでの展覧会では服がぱっと目に入る作りだったが、今回、写真や文字が埋める壁の隙間から後ろ側の空間に並べられた服の展示を覗くという珍しい趣向だ。選ばれた服からは、彼がいかに時代を超越したクリエイションをしていたかが見えてくる。

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『Alaïa avant Alaïa』展より。© Stéphane Aït Ouarab

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壁の裏手に彼のクリエイションが隠された展示法だ。© Stéphane Aït Ouarab

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左: チュニジアの美大にて。1951年。©️Fondqtion Azzedine Alaïa  中: 1967年、パリ7区のベルシャス通りのアパルトマンにて。©️Jean-Pierre Ronzel 右: 1982年のアライア。©️Alice Spring

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壁にはアライア自身の言葉も多く掲げられている。たとえば1950年代「自分は偉大な彫刻家になれないとわかった時、方向を転換した」とモードへの移行を語り、また80年代、彼がモード界の寵児となるきっかけのひとつにニューヨークでバーグドルフ・グッドマンでのショーがあったが、その提案の手紙を受け取ったアライアは、てっきり友人のティエリー・ミュグレーがからかっているのだろうと思った、などクスリとさせるものも。なお文字要素はフランス語と英語の2カ国語である。構成は1950年から10年区切りで、各時代、彼と関わりのあった人物が登場。セルジュ・ルタンス、ティエリー・ミュグレーといった男性もいるが、女性の身体を美しく見せる服創りにかけていた彼らしく、圧倒的に女性が多い。女優のアルレッティやグレタ・ガルボ、作家のルイーズ・ドゥ・ヴィルモラン、チュニジアの女性運動家のハビバ・マンシャリ……彼女はクチュリエとしての彼の才能をいち早く見いだしていた人物だ。

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左: 数日間だけディオールのアトリエにいたことがあるアライア。コレクションの前夜で沸き立つような雰囲気だったと彼は回想する。 中: お忍びでパリに来ていたグレタ・ガルボが彼に依頼したマニッシュなコート。 右: 1960年代、彼は複数のメゾンの仕事をした。サン・ローランの有名なモンドリアン・ドレスのサンプルを作ったのは彼だそうだ。

上のフロアはそのハビバの娘レイラ・マンシャリとアライアの友情に捧げる1室といえるだろう。エルメスのフォーブル・サントノレ通り24番地本店のウィンドウディスプレーを1978年から、2013年まで手がけていたレイラ。2017年にはグラン・パレで過去の仕事の中から8テーマを選んで彼女が構成した『レイラ・マンシャリの世界』展が開催されたが、2020年4月4日に他界した彼女。まさかアライア展で若い時代の彼女に再会できるとは!! 彼と彼女は8歳違いの姉弟のような関係だった。その昔彼女はギ・ラロッシュのハウスマヌカンで、彼はギ・ラロッシュのもとで学び……。パリに来た彼を自分と同じアパルトマンの小さなスタジオに住めるように手配したのも彼女である。

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2階の展示フロア。 © Stéphane Aït Ouarab

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左: アライアのベルシャス通りのアパルトマンにて。1967年。©️Jean-Pierre Ronzel 右: 彼のアパルトマンにあった右下の鳥のオブジェが、2階の展示スペースの入り口に置かれている。photo:Mariko Omura

20年くらい前に冗談めかして“私には男性崇拝者が多いのよ”と語るのを聞いたことがあるけれど、上のフロアの1部屋の壁に展示された1960年代後半に撮影された彼女の魅力あふれる写真を見ているとおおいに納得できる。ギ・ラロッシュでハウスマヌカンをしていた彼女のスタイルとファッションセンスが輝き、ふと見せる表情は女優のロミー・シュナイダーのようにセンシュアルで……。エルメスのアーカイブから、1998年の舞台『アンティゴーヌ』のための衣装デザインや彼女が遺したデッサンなども見ることができ、“レイラさん”が手がけたウィンドウのファンにはうれしいだろう。

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展示より。左: レイラ・マンシャリによるアズディン・アライア 。 右: 我々が知らない時代のレイラ。

『ALAïA AVANT ALAÏA』展
開催中~2022年10月23日
Fondation Azzedine Alaïa
18, rue de la Verrière
75004 Paris
開)11:00~19:00
無休
料)7ユーロ
https://fondationazzedinealaia.org/exposition-en-cours

 

editing: Mariko Omura

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