性的暴行を受けたウクライナ女性が直面する更なる苦境とは?

Society & Business 2022.05.16

ウクライナ戦争が始まって以来、多くの難民女性が性的暴行の被害を受けている。妊娠しても避難先の国で妊娠中絶できない女性を非営利団体が支援している。最優先で取り組んでいる国の一つがポーランドだ。

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ウクライナにおけるロシアの侵略に反対するデモでウクライナ国旗を身にまとった女性。(ウクライナ、2022年5月5日)photography: Getty Images

ウクライナ戦争が勃発して以来、何百万人ものウクライナ国民が近隣国に避難している。そうした中でウクライナ女性に対するレイプや性的暴行の報告は増えるばかりだ。

特に妊娠中絶を禁止するポーランドでは苦境に立たされる女性が多い。ポーランドに到着する前にロシア軍、もしくは弱い立場に付け込む地元の人に性的暴行を受けた女性たちには、祖国が悲惨な状態に陥ったことや助けてくれるはずの人の不誠実な行為だけでなく、更なる苦しみが待ち受けている:ポーランドでは中絶することがほとんど不可能なのだ。

この国で中絶が認められるのは3ケースのみ。近親相姦、母親の命が危ぶまれる妊娠、そしてレイプ。しかしレイプが成立するのは取り調べが行われた場合のみであり、ほとんどの場合、被害者に不利な結果をもたらす。

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認めてもらえないレイプ事件の数々

ウクライナのメディア「ザボロナ」に掲載された一人のウクライナの若い女性の話が仏リベラシオン紙に紹介され、暴行を受けた後もつらい道のりが待っていることが明らかになった。「先月、戦争から逃れてきた19歳のウクライナ女性は49歳の男性からシェルターを提供されたが、その後レイプされたと届け出た」と同紙は述べた。「警察と検事は証拠を集め、メディカルチェックを行い、取り調べを行った。一週間後、女性による強い抵抗はなかったので暴行ではないと裁判所は判決を下した。裁判官はこの事件を強姦ではなく、支配的状況における性的虐待に変更した」

このような状況を鑑みて、世界で多くの団体が警鐘を鳴らし、被害に遭った女性たちの支援に乗り出している。AFP通信が報じたように、NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチは4月29日に「人身売買、暴力やレイプの被害者」であるウクライナ女性を守るための監視と防止策を「緊急に」強化する必要があると警告した。非営利団体のWomen On Webは2005年以来、妊娠中絶に制限をかける法律がある200近い国に暮らす女性を支援し、12週間までの妊娠にピルキットを提供している。ロシアの侵攻が始まって以来、この団体はポーランドにおける支援にさらに力を入れている。中絶キットは無料の遠隔診察後に配送されるようになっている。

同様にAFP通信によると、Abortion Without Bordersという6つのNGO(ポーランドのNGOや国際的組織を含む)で構成される支援団体は、3月初頭から4月中旬の間にポーランドに避難した267名の女性の中絶の支援をしたと報告している。経口中絶薬を提供したケースが大半だ。

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2880個のアフターピル

一方、フランスや日本が加盟する国際家族計画連盟(IPPF)は、約2880個のアフターピル、妊娠検査薬とHIVの治療薬が入っているDIYレイプキット、そして妊娠24週目まで使える中絶薬をウクライナに送ったと英ガーディアン紙が報じた。同紙によると、それまでウクライナでは緊急避妊薬を利用できたが、戦争で流通が断たれ不足状態となっているそうだ。

仏リベラシオン紙はフランス国内でもAssociation de défense de la démocracie en Pologne(ポーランドの民主主義を守る団体)などで支援活動が始まっていると報じた。同紙によればこの団体は「フランスの病院と連携し、難民の受け入れの手伝いをしている」とのことで、すでにパリ10区にあるサン・ルイ病院と提携を結んだそうだ。「妊娠9週目以上で中絶を希望している難民女性のため」だ。

text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr),translation: Hana Okazaki, Hide Okazaki

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