世界は愉快 夏フェス編 from ベルリン 空港や宮殿が会場に! ドイツ夏の音楽祭の楽しみ。

Travel 2021.08.12

写真・文/河内秀子(在ベルリンライター)

ドイツの音楽ファンにとって、夏はコンサート会場とは趣の違う場所で開催される音楽祭が楽しみな時期でもある。そこで、ベルリン近郊で今年開催される注目の音楽祭をふたつ紹介したい。

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ひとつは、ベルリンから電車で3時間ほど、東部ドイツの街ドレスデン近郊の湖に浮かぶ優美なバロック宮殿、モーリッツブルク城で開催されている「モーリッツブルク・フェスティバル」だ。クラッシックの音楽祭は宮殿や庭園が会場となることが多く、その優美な空間が音楽をよりいっそう豊かなものにしてくれるのだが、涼やかでロマンチックな夏の夜を楽しむことができるのがこのイベント。

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モーリッツブルク城。16世紀に作られた狩猟城を、1723年からザクセン選帝侯アウグスト強王が豪奢なバロック様式に改築した。 ©Oliver Killig

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フェスティバルの創立者、ヤン・フォーグラー。ドレスデン音楽祭の総監督も務める。© Felix Broed

1993年、世界的なチェリストであるヤン・フォーグラーによって創立された音楽祭は、自然保護地区の中にある狩猟城という素晴らしい立地もあって、あっという間に世界中から有名なソリストや若手音楽家たちが集まるフェスティバルとなった。第29回目の開催となる2021年は、宮殿の入り口前のテラスをメイン会場としたオープンエアスタイル。8月22日、フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディの弦楽八重奏で幕を閉じる。コンサートに足を運んだら、音楽だけでなく、鹿や猪が生息する周囲の森や水面に映る左右対象の城の姿も堪能したい。

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過去に行なわれた、モーリッツブルク城のテラスでのコンサート風景。©Oliver Killig

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そしてもうひとつ。首都ベルリンでは、昨年惜しまれつつ閉港したテーゲル国際空港のターミナルがこの夏、現代音楽、サウンドパフォーマンスのフェスティバル「ゾナンビエンテ」の特別会場となり、話題を呼んでいる。

世界中から訪れる人々がベルリンに到着する際、まず耳にするのがテーゲル空港の音だった。その音をモチーフに、ベルリン発の伝説の実験音楽バンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのブリクサ・バーゲルドや、ベルリンを拠点とする有名なサウンドアーティスト、スーザン・フィリップスなどが手がけた音楽作品が、空港中に設置された2000個以上のスピーカーから流れる。観客は様々な音を追って空港内を歩き回りながら、空港の建築や空間を楽しむことができるという趣向で、テーゲル空港に最後のお別れを告げるための企画でもあるのだ。

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2020年10月末、ベルリン・ブランデンブルク国際空港のオープンとともに、1974年に開港したテーゲル空港は、その歴史に幕を閉じることとなった。

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特徴的な六角形のターミナルは離着陸ゲートから出口までの移動も少なく、コンパクトで市内にも近いと世界中のファンに、そしてベルリナーからも愛されていた。

音楽だけでなく、その場所の建築や空気感までをも楽しめる、さまざまな音楽祭。長いロックダウンが終わった開放感もあるベルリンでは、家の外に出て、めいいっぱい短い夏を満喫したい気分だ。

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photography & text: Hideko Kawachi

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