スウェーデンの風変わりな習慣めぐりネットで大議論!

Culture 2022.07.04

英語圏のSNSプラットフォーム、Redditに投稿されたひとつのエピソードを発端に、世界中で何千もの似通ったストーリーがシェアされた。そこには伝統に基づくスウェーデンの風習が語られている。

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1970-1980年代にはよく見られた習慣。photo: Getty Images

5月末、SNSプラットフォームRedditのユーザーがある体験をシェアした。子どもの頃、午後に友だちの家に遊びにいった時の話だ。「スウェーデン出身の友だちの家に行き部屋で遊んでいると、彼のお母さんがご飯ができたと大きな声で呼んだ。そしたらなんと、“食事している間ここで待っていて”と、その友人に言われたんだよ」

そのユーザーは特に根に持っているわけではないようだが、このストーリーはたくさんの人に衝撃を与えた。理由のひとつは、実に多くの人が似たようなストーリーをシェアしたからだ。どうやらスウェーデンでは「古い習慣」に基づいて、家庭によっては遊びに来た子を夕飯に誘わないようだ。「子どもの頃、友だちの家に行った際、 “夕飯食べてくるから、ちょっと待っててね”とよく言われた。その間は友だちの部屋で待ってた」とスウェーデン出身の歌手、ザラ・ラーソンがTikTokで語っている。40歳のデザイナー、ロイ・ガジもAFP通信に同じような体験を語り、最低でもサンドイッチくらいは渡されたが、かなりの時間を友人の部屋で過ごしたと振り返る。

これら一連の議論は「#Swedengate」というハッシュタグとともにSNSを賑わせた。

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「借りを作ってしまうということ」

すべての家庭に当てはまるわけではないそうだが、スウェーデンのこの風習は1980-90年代まで顕著だったそうだ。しかし現在はなくなっていると、ストックホルム大学教授のリチャード・テルストロムはAFP通信に語った。この風習は「私たち自身について、私たちは誰なのかについて、多くのことを明かす」から興味深いと、食物史の専門家であるテルストロム教授は捉える。

スウェーデン以外では多くの反響を巻き起こしたものの、この習慣の理由はケチくささでも、ましてや言われているように外国人差別でもない。「家族間の関係を配慮したもので、互いに借りを作らないための方策です」と教授はAFP通信に話す。「もし、あなたの子が我が家でたくさん食べたら、あなたは私に借りを作ってしまう。しかし、それは大人同士の関係上良くないことで、避けるべきなのです」

もっと平凡な事情が考慮される場合もあっただろう、と教授は考える。例えば「家族で食事をする機会を損なわないこと」だ。また、携帯電話が登場する前は、相手の家族に連絡を取る手間がかかったことなども挙げる。

しかし歴史的要因の方が大きいのではないかと教授は考える。スウェーデンがヨーロッパの中で最も貧しい国のひとつだった時代、家族全員のための食料が足りない家庭は、子どもを近所の家に送って食べさせてもらっていた。その名残で子どもをご飯に招くことは相手の家族に対する侮辱に当たると捉えられてしまう可能性がある。「子どもをご飯に招くということは、その子の家が経済的に苦しいとみなしていることを意味するからです」と教授は説明する。

また、教授は#Swedengateは人種差別に基づくという批判を真っ向から否定する。「複数の移民の方から問い合わせがありました。部屋に置き去りにされるのは、自分は家族とテーブルを囲むのにふさわしいくない人種だからだと思っていたと。これは民族的なこととはまったく関係ないので、このように受け止められてしまうのはとても残念です。相手に借りを作らせないための配慮なのですから」と教授は強調した。

text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr), AFP translation: Hana Okazaki, Hide Okazaki

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