ランチは3時間越え!?イタリア人が1年でいちばん大切にする、家族愛にあふれた「クリスマス」の風習とは?

Gourmet 2024.12.06

マッシ

日々の生活を彩るワインを自分らしく楽しむフィガロワインクラブ。 イタリア人ライター/エッセイストのマッシが、イタリア人とワインや食事の切っても切り離せない関係性について教えてくれる連載「マッシのアモーレ♡イタリアワイン」。今回はクリスマスの食卓にかける、イタリア人たちのアツい想いを語ってもらいます!

>>前回:金よりも高かった⁉︎ ピエモンテを包む霧から生まれる、イタリアワインの至宝「ネッビオーロ」の真実。


イタリア人は一年中、「食事とお喋りを欠かさず」最高に過ごすというイメージがある。それは合っている。「これがなければ生きるのがもったいない」と思っているイタリア人がほとんど。最高のライフスタイルだと思われているかもしれないけど、実はクリスマスの時期になると、そのイメージがさらに深まって、まるで映画なのか本当の現実なのか、見分けがつかなくなるほどだろう。イタリア人にとって「食事の時間」と「家族の大切さ」がとても大切だとわかるのがクリスマスなんだ。今回はイタリア人が12月24日(クリスマスイブ)と25日(クリスマス)と26日(聖ステファノの祝日)の3日間、どう過ごすか紹介しようと思う。

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実家でのクリスマスツリーの様子。

よく勘違いされるけど、24日=クリスマスイブはヨーロッパでも祝日ではない。この日もいつものように仕事をしないといけないのだ。分かっていても、気持ち的には朝から「早く終わらせたい」「早く帰りたい」などと思う。そして、クリスマスの過ごし方は地域によって変わる。北部イタリアはクリスマスイブの夕飯、中部と南部イタリアはクリスマスの昼食がいちばん大事で、がっつりクリスマスモードに入る。とにかく、2日間かけてずっと食べ続けるのが、イタリア全国で共通するクリスマスの習慣だ。

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みんなが忙しく、不思議な空間になるイタリアのクリスマス

家では朝早く準備して食事を作りはじめるのが一般的だ。そのメニューは数週間前から考えて、少しずつ準備する。お婆ちゃんやお母さんはいちばん忙しくて、子どもの時に僕も手伝っていた思い出がある。料理だけではなく、クリスマスツリーやプレゼピオ(聖書の物語を再現した飾り付けをする習慣)もあって、自宅はいつもより不思議な空間になるのがクリスマスだ。みんなが忙しいからこそ、家族へのアモーレ(愛)や温かさを感じられて、料理の盛り付けなどはどんな宝物より感動する。あまり会わない親戚たちも全員が集まって、人生の思い出になるのだ。長く日本に住んでいる僕は、子どもの頃のクリスマスを思い出すとマンマの味とその空間はそのまま、いまでも記憶で鮮明に楽しめる。

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実家でのクリスマスの料理の様子。

25日の朝はとにかく、「プレゼント交換」「親戚とお喋り」「最高の食事」という、イタリア人になくてはならないコンボで過ごす。準備していた料理を、普段ではあまり使わない綺麗な食器に丁寧に盛り付ける。5種類以上の前菜を乗せてテーブルの真ん中に置いて、好きなだけ自分で取る。この料理は1時間かけてゆっくり食べるのだ。この時にお母さんとお婆ちゃんも食べながら楽しく喋るけど、料理が足りているか、問題がないかをずっとチェックしている。この場を仕切るのは間違いなくお婆ちゃんとお母さんだ。誰もこのふたりには逆らえないのだ。

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最近、日本でも認知度が上がってきたクリスマスの定番お菓子「パネットーネ」。

大体、お昼ご飯は12時半からスタートして、時間が過ぎるのを忘れて時計を見るたびに驚く。ピエモンテでは必ず食べるアニョロッティという詰め物のパスタを食べ終わるのは14時頃。お腹がいっぱいになりかけているところに、そこからお肉料理、野菜だけではなく、パン、グリッシーニ、チーズも。最後に限界を超えて何も食べれないと思った頃、クリスマスにしかない定番のパネットーネとパンドーロが何種類が出てくる。デザートはこれだけではなく、コーヒーに合う焼き菓子もたくさん現れる。デザートを食べる時間は大体16時頃になることが一般的で、食事のデザートなのかおやつ時間なのか分からなくなる。恐ろしいことに、ここから数時間後にディナーの準備が始まるのだ。クリスマスの時にしか見れない光景としては、朝から夜までテーブルマットが敷いてあることだろう。

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大人も子どもも着飾って、最高の食事をともにする。

家で食べるといっても、高級なレストランに出かけるような服装でいることが多い。大人から子どもまでオシャレに着飾る。そして、ディナーが長くなると夜遅くまで食べることがあるから、実家に泊まる親戚や友だちが珍しくはない。そうなると必然的に翌日26日の朝からまた同じことが始まるのだ!みんな口を揃えて「お腹いっぱい」「もう無理だ」「何も入らないよ」と言いながらテーブルに辿り着くと、不思議なことに食欲が出る。食べるだけではなく、ワインやスプマンテ(イタリアのスパークリングワイン)、グラッパもいつもよりたくさん飲む。ここでノンアルコールのワインも準備して少年少女も大人のように真似して最高の食事が過ごせる。

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ピエモンテのお店。ショーウィンドウもすっかりクリスマスの雰囲気に。

イタリアでは、クリスマスの時期は必ず家族で過ごし、年末年始は友だちと自由に過ごすという習慣だ。年越しは家族で過ごす習慣がある日本とは異なる過ごし方で、文化の違いがおもしろい。イタリア人にとってクリスマスは最も大事なお祝いだから、家族の大切さを改めて考える時間にもなる。一年の収穫に感謝して家族の絆を深める大切な機会として、クリスマスの食事は特別な意味を持っている。テーブルに並ぶイタリア料理は手間ひまかけて作るものが多く、すべての料理を一日で作り終えるのは難しい部分もあるからこそ、マンマとお婆ちゃんへの愛情が深くなるのだ。

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ピエモンテの地元の教会。

食事がメインだと思われるかもしれないけど、世界一大切な家族を感じることで一年分のエネルギーを得ることができる。ひとりになった時にも、これまでのクリスマスの食事を思い出すことで、寂しさが飛ぶ。クリスマスの思い出が、人生の精神的な支えにもなるのだ。

1983年、イタリア・ピエモンテ生まれ。トリノ大学大学院文学部日本語学科修士課程修了。2007年に日本へ渡り、日本在住17年。現在は石川県金沢市に暮らす。著書に『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(2022年、KADOKAWA 刊)
X:@massi3112
Instagram:@massimiliano_fashion

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