土に触れ、食文化を楽しむ。地方暮らしに教わる豊かな時間。

Beauty 2021.10.12

桐村里紗

人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルス」を提唱し、新著『腸と森の「土」を育てる〜微生物が健康にする人と環境』を刊行した桐村里紗先生が、東京と鳥取県の二拠点生活をスタート。前回に続き、その魅力をお伝えします。


実践してみたらあまりにも豊かだったデュアルライフ。
ローカルエリアでの地球のリズムに一致したライフスタイルの中には、土に触れる生活と食があります。

書籍でもご紹介しましたが、「協生農法」という地球環境を回復する農業を行う畑を、Jリーグチームのガイナーレ鳥取のスタジアム横に開いたために、私自身も鳥取県米子市に拠点を持つことになりました。
そのため、日常の中に、畑作業と観察があります。

協生農法は、不耕起、無農薬、無施肥というスタイルで、私のように農業経験がない人も簡単に始めることができます。
友人知人からも「本を読んでから、自宅の庭で初めてみたよ!」という声を聞きます。
畑作業をすることで、自然に身体を動かし、汗をかき、土に触れることで心身が元気になります。
おまけに、ワイルドに育ったその収穫物は、過保護に育った植物よりもたくましく、さまざまなファイトケミカルを含んでいます。
そんなにたくさん採れるほどではないですが、収穫物が食卓に並ぶのはとてもうれしいものです。
おまけにその活動によって、自然以上に豊かな拡張生態系が構築されると、生物多様性の減少や気候変動の問題にも貢献できるので、まさに、プラネタリーヘルスな活動です。

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左: 行きつけの「きっちんピノキオ」のランチは、地元野菜大盛りの「ごちゃまぜサラダ」。 右: 畑から初収穫のミニトマト。

そしてありがたいのは、天然の地魚や野生肉が、すぐに手に入ること。
なんと、毎週月曜日には地元の港直送の魚をたくさん積んだトラックが、家の目の前にやってきます。
大きな鯛一尾、350円。ノドグロ4尾、500円!と、都市部では信じられない価格。
新鮮でおいしいのは当然です。

さらに直売所では、上手に処理された猪や鹿などの野生肉がいつでも手に入ります。
野生肉はとっつきにくいイメージがあるかもしれませんが、フレンチではジビエは定番ですね。
あっさりした野生動物の肉や脂を一度経験すると、もう元に戻れません。
現代型の畜産の肉は、彼らの本来の食べ物ではない穀物由来の飼料や抗生物質を与えられるなどして、腸内環境が悪化し、脂身にも炎症を起こす脂肪酸を多く含みます。
それを食べる人にとっても不健康の原因に。

野生肉に含まれる脂は、共役リノール酸やオメガ3系脂肪酸など、抗酸化作用があり、炎症を抑える脂肪酸を多く含みます。
鹿は脂肪分が少なくあっさり、猪は脂身も多くこっくり。
我が家では、セリやゴボウなど香りの強い野菜と合わせて、猪鍋にします。
上手に処理されていればまったく臭みもなく、アクも出ません。
肉好きの夫も喜んで食べてくれ、いまでは「ジビエがいちばん」と言うようになりました。

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クレソンたっぷりの猪鍋は定番。

環境負荷が甚大な家畜の肉を人類が食べ続けることは、持続不可能ですが、それを解決するひとつの方法が野生肉を食べることです。
日本では、猪や鹿の数が増えすぎて獣害被害が出ているエリアも多く、むしろ食べて適正化することで、バランスをとることができます。

最近アメリカのスーパーマーケットでは、野生のバイソンやバッファローの肉、ジビエジャーキーなどがヘルシーかつエシカル志向の消費者に人気です。
日本では、まだまだスーパーマーケットの店頭には並んでいませんから、都市部ではネット通販を利用するといいですね。

日本の多くのローカルエリアは比較的閉鎖的なところも多いですから、移住者が暮らしやすい地域ばかりではありません。
私の実家のある岡山も、元々はとても閉鎖的ですが、3・11後に移住者が全国でいちばん多かったため、部分的に開かれたエリアがあるといったところです。
鳥取県も地域によるそうですが、古くから大陸に開かれていた漁港が近い米子市は、オープンマインドな人が多いそうです。

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地元Jリーグチーム、ガイナーレ鳥取のスタジアムで爽快に芝刈り。

そんなエリアではありますが、今回、地元で信頼の厚いJリーグチームの後ろ盾をいただき、理解ある大家さんが地域の皆さんに事前に十分に説明をしたうえで、自治会長さんを含めてご近所の方々に挨拶に連れて行ってくださいました。
コロナ禍ですから、こちら側のエチケットとしても感染対策を十分に行ったうえで、抗原検査を頻回に行うなど配慮をしています。
そのような状況で、ありがたいことに新参者を温かく受け入れていただいています。

都会暮らしでは、近隣の人の顔もなかなか一致しないのが当たり前ですが、先祖代々の土地に建てた大切なご実家を貸して下さっている大家さんとは、すっかり家族のようなお付き合いが始まっています。
ご近所の皆さんも、自分の畑で採れた野菜や手作りのケチャップや豆腐を持って来てくださったり、慣れない魚の炊き方を教えてくださったり。そして、そのお返しにこちらからもおすそ分けをしたりと、リアル物々交換な日常を経験しています。
来年の味噌の仕込み時期には、ご近所の女性たちが集まっての味噌作りにもすでに声をかけていただいているというありがたさです。
元々、人と人とは、地域で分け合い、支え合って生きていたことを思い出している毎日です。

我が家の場合は、仕事のご縁がきっかけで必然的に場所が決まりましたが、想像を遥かに超えた、快適で豊かなプラネタリーヘルスライフを送っています。
日本のローカルエリアの魅力を暮らしながら体感させてもらっています。

本格的な移住や二拠点、多拠点ライフに踏み出せない方は、「ADDress」などのサービスを利用して、お試し移住をしながら自分に最適なローカルエリアを見つけてみてはいかがでしょうか?

これからも、私の体験を交えてローカルな暮らしの魅力をお伝えしていきますね。

text:Lisa Kirimura

桐村里紗

医師 / tenrai株式会社 CEO
臨床現場において、最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。食や農業、環境問題への洞察を基にした人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルス」や女性特有の悩みを解決する「フェムケア」など、ヘルスケアを通した社会課題解決を目指し、さまざまなメディアで発信、プロダクト監修などを行なっている。また、東京大学工学系研究科道徳感情数理工学・光吉俊特任准教授による社会課題を解決する数式「大和算」の社会実装により人と社会のOSをアップデートすることを掲げたUZWAを運営。現在は、東京と鳥取県米子市の2拠点生活を送り、米子市ではソニーコンピューターサイエンス研究所の研究する協生農法(拡張生態系)の圃場を開き、土と向き合う生活を送っている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演するなどメディアでも活躍し、新著『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が話題。
https://tenrai.co/

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